こんにちは いぬい歯科クリニック 院長の乾です。
「テレビを見ていると、いつも口がポカンと開いている」
「寝ているときも口が開いている」
「何度『お口を閉じて』と言っても、すぐに開いてしまう」
前回の記事では、子どもの「お口ポカン」や口呼吸についてお話ししました。

口呼吸には、鼻づまりやアレルギー性鼻炎、舌の位置、唇の使い方、歯並びや顎の形など、さまざまな要因が関係します。
そして、歯科では必要に応じてMFT(口腔筋機能療法)を行い、舌や唇の使い方、飲み込み方、鼻呼吸などを練習していくことがあります。
では、こうしたお口の機能はいつから育ち始めるのでしょうか?
小学生になってからでしょうか?
歯が生え揃ってからでしょうか?
実は、もっとずっと前です。
赤ちゃんは0歳の頃から、毎日の授乳や離乳食などを通して、舌や唇、顎を使う経験を積み重ねています。
今回は、将来のお口ポカンや口呼吸について考えるうえでも知っておいてほしい「0歳からのMFT」についてお話しします。

そもそもMFTとは?
MFTとは「Oral Myofunctional Therapy」の略で、日本語では「口腔筋機能療法」と呼ばれます。
舌や唇、頬などのお口の周りの筋肉を正しく使えるようにしていくためのトレーニングです。
例えば、
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舌を正しい位置に置く
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唇を自然に閉じる
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正しい飲み込み方を身につける
-
鼻で呼吸する習慣をつける
といったことに取り組みます。
小児矯正をしているお子さんでは、歯並びだけではなく、こうした「お口の使い方」にも目を向けることがあります。
では、0歳の赤ちゃんにも同じようなトレーニングをするのでしょうか?
「0歳のMFT」は筋トレではありません
もちろん赤ちゃんに、
「舌を上に上げて!」
「この運動を10回やって!」
とは言えません。
私たちが考える「0歳からのMFT」は、もう少し広い意味です。
赤ちゃんが毎日の生活の中で、舌・唇・顎などを使う経験を積み、その子の発達に合わせて「食べる・飲み込む・呼吸する」といった機能を獲得していくことをサポートする。
これが中心になります。
赤ちゃんは最初から上手に食べられるわけではありません。
授乳から始まり、離乳食を口に取り込み、舌を動かし、食べ物を処理し、飲み込み、やがて噛むようになります。
つまり、毎日の「食べる」という行為そのものが、お口を使う大切な経験なのです。
授乳は、赤ちゃんがお口を使う大切な経験
赤ちゃんのお口の機能は、授乳の時期から発達していきます。

授乳するとき、赤ちゃんはただミルクを流し込んでもらっているわけではありません。
唇を使い、舌を動かし、下顎を動かしながら吸い、そして飲み込みます。
こうした一連の動きは、その後の「食べる」という機能につながっていきます。
母乳か哺乳瓶かということだけで単純に良し悪しを決めるものではありません。
大切なのは、
赤ちゃんがその子なりに、しっかりとお口を使えているか。
という視点です。
離乳食は「栄養を摂るだけ」の時間ではありません
離乳食が始まると、ついつい、
「何を食べさせる?」
「何グラム食べた?」
「栄養は足りている?」
ということに意識が向きます。
もちろん栄養は大切です。
でも歯科の立場からもう一つ見てほしいのが、
「どう食べているか」
です。
離乳食は、赤ちゃんがそれまでの「吸う」という動きから、「口に取り込む」「舌で食べ物を動かす」「つぶす」「飲み込む」といった新しい動きを学んでいく時期でもあります。
スプーンを口の中に入れすぎていませんか?
例えば離乳食初期。
お父さん・お母さんがスプーンを赤ちゃんの口の奥まで入れて、上顎にこすりつけるように食べ物を入れてしまうことがあります。

これでは大人が「食べさせている」状態になってしまいます。
離乳食初期では、スプーンを下唇付近に置き、
赤ちゃん自身が上唇を使って食べ物を取り込むのを待つ。
そして、ゆっくりスプーンをまっすぐ引き抜きます。
「早く食べさせよう」とするのではなく、
赤ちゃん自身がお口を使うのを待ってあげる。
この経験が大切です。
「モグモグするのを待つ」ことも大切です
もう一つ気をつけたいのが、食べさせるスピードです。
一口入れたらすぐに次の一口。
さらに次の一口。
これでは、赤ちゃんがお口の中で食べ物を処理する時間が十分に取れないことがあります。
口に入った食べ物を舌で動かし、モグモグし、飲み込む。
その動きを確認してから次の一口へ。
食べる量だけではなく、「どうやって食べたか」を見てあげてください。
赤ちゃんは毎日の食事を通して、少しずつ食べ方を学んでいきます。
食べるときの「姿勢」も見てみましょう
お口だけを見ていればいいわけではありません。
食べるときには、頭や首、体幹など身体全体を使います。

まだ一人で安定して座れない赤ちゃんを、無理に椅子に座らせる必要はありません。
発達に合わせて身体を支え、お口を動かしやすい環境をつくってあげます。
成長して椅子に座って食べられるようになってからも、身体がグラグラしていたり、足がずっとブラブラしていたりすると、食べることに集中しにくい場合があります。
だから私たちは、お口だけではなく、
「どんな姿勢で食べているのかな?」
というところも見ます。
ただし、「姿勢が悪いから歯並びが悪くなる」と単純に結びつけるものではありません。
食べるという動作をしやすい環境の一つとして、発達に合わせた姿勢を考えていくことが大切です。
手づかみ食べも大切な経験です
離乳食が進んでくると、赤ちゃんは自分で食べ物に手を伸ばすようになります。
ぐちゃぐちゃになるので、
「やめてー!」
と思うこともあるかもしれません(笑)。
でも、手づかみ食べも大切な経験です。
自分で食べ物を持ち、自分の口まで運び、前歯でかじり取る。
そうすることで、一口の大きさなども少しずつ経験していきます。
「食べさせてもらう」だけではなく、
「自分で食べる」
という経験も、お口の機能が発達していく過程の一つなのです。
お口に触れることにも少しずつ慣れていきましょう
歯が生えてから突然、
「今日から歯磨きします!」
と口の中に歯ブラシを入れられると、嫌がる赤ちゃんもいます。
歯が生える前から、遊びやスキンシップの中で、
頬に触れる。
唇に触れる。
お口の周りに触れる。
といった経験を少しずつしておくのもよいでしょう。
これは歯磨きの準備という意味だけではありません。
お口の周りにはたくさんの感覚があります。
触れられることや、自分でお口を動かすことなど、さまざまな経験を積みながらお口の機能は発達していきます。
そして「お口ポカン」につながる舌・唇・鼻呼吸
ここで、前回お話しした「お口ポカン」に戻ります。
私たちが少し大きくなったお子さんを見るときには、
「舌はどこにある?」
「唇は自然に閉じられる?」
「鼻で呼吸できている?」
「正しく飲み込めている?」
といったことを確認します。
でも、こうした機能がある日突然完成するわけではありません。
0歳からの授乳や離乳食など、毎日の生活の中で舌・唇・顎を使いながら、少しずつ機能を獲得していきます。
だからこそ、
「お口ポカンになってから、舌を上げるトレーニングを始める」だけではなく、その前の発達にも目を向けたい。
と私たちは考えています。
0歳から取り組めば、お口ポカンを絶対に防げる?
ここは誤解してほしくないところです。
0歳からお口の機能を意識して育てれば、将来の口呼吸や歯並びの問題を必ず予防できる、ということではありません。
口呼吸や歯並びには、
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鼻炎や鼻づまり
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アデノイドや扁桃
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顎や顔の成長
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歯の大きさ
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遺伝的な要因
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舌や唇などの口腔機能
-
日常生活の習慣
など、さまざまな要因が関係します。
どれか一つだけで決まるものではありません。
だから、
「この抱っこをすれば歯並びが良くなる」
「この離乳食をすれば口呼吸にならない」
ということではありません。
私たちが伝えたいのは、
お口の機能が大きく発達する乳幼児期から、その子がどのようにお口を使っているのかを見守ってあげましょう
ということです。
0歳でも歯医者に相談していいの?
もちろんです。
「まだ歯がほとんど生えていないのに、歯医者に行っていいんですか?」
と聞かれることがありますが、歯科医師や歯科衛生士が見るのはむし歯だけではありません。
例えば、
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授乳について気になる
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離乳食の食べさせ方が分からない
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なかなかモグモグしてくれない
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丸飲みしている気がする
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お口がいつも開いている
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舌の動きが気になる
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歯磨きを嫌がる
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歯が生えてきたけれどケア方法が分からない
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指しゃぶりやおしゃぶりが気になる
-
将来の歯並びが心配
なども、相談していただいて大丈夫です。
私たちは、
「歯が生えてから歯を見る」のではなく、その子のお口がどのように発達しているのかを見る
ことも、小児歯科の大切な役割だと考えています。
いぬい歯科クリニックでは0歳からご相談いただけます
大阪府吹田市・千里山のいぬい歯科クリニックでは、0歳のお子さんからお口についてのご相談を受けています。
むし歯予防や歯磨きだけでなく、食べ方、舌や唇の使い方、お口ポカンなど、お子さんのお口の発達について気になることがあればご相談ください。
当院では毎月1日に「0歳からの歯磨き相談会」も行っています。
名前は「歯磨き相談会」ですが、
歯磨きだけではなく、これからのお口の発達についてお父さん・お母さんと一緒に考える機会にしたい
と思っています。
まとめ|0歳から「歯」ではなく「お口の使い方」を見てみよう
MFTというと、舌を動かしたり、唇を鍛えたりするトレーニングを想像するかもしれません。
しかし、その土台となるお口の機能は、もっと前から育っています。

授乳する。
離乳食を唇で取り込む。
舌を使う。
モグモグする。
飲み込む。
自分で食べ物を口に運ぶ。
こうした毎日の経験の積み重ねがあります。
だから私たちは、
お口ポカンになってから「口を閉じよう」と教えるだけではなく、0歳からお口の機能を見ていくことも大切
だと考えています。
そして、ここまで読んで、
「じゃあ、0歳になる前にできることってあるの?」
と思われた方もいるかもしれません。
実は、お父さん・お母さんに赤ちゃんのお口について知ってもらうタイミングは、出産後だけではありません。
次回は「マタニティ期から考える赤ちゃんのお口と歯の発達」についてお話しします。
