保険診療って本当に安心?長期的に歯を守るために知ってほしい現実
投稿日:2025年5月13日
カテゴリ:院長ブログ
こんにちは いぬい歯科クリニック 院長の乾です。
本日は保険診療に関しての話です。
「保険でやってもらえるならその方がいいですよね?」 そう言われることがよくあります。もちろん、保険診療には大きな役割があります。
ただ最近、あるセミナーで改めて気づかされたのが、 保険診療は“最低限の医療”であり、長期的な歯の安定には向いていないという事実でした。
✅ 日本の保険診療は“生活保護と同等の最低限医療”
保険診療は、誰でも一定の費用で必要最低限の治療が受けられる、いわば「セーフティネット」です。これは国民皆保険という素晴らしい制度の恩恵でもあります。
しかし一方で、「最低限の医療」しかカバーされないという側面もあります。
実際、海外(アメリカなど)で“ちゃんと歯を治そう”と思えば、 ・数十万円〜100万円単位の治療費 ・数ヶ月〜年単位の治療期間 がかかるのが普通です。
それが日本では、数千円〜数万円、1回〜数回の通院で治療が完了する。これは一見「良いこと」のようで、実は“必要な工程や材料が省かれている”という現実でもあります。
✅ 保険診療の限界:耐久性と再治療の連鎖
保険で使える材料には制限があります。 ・金属の詰め物(いわゆる銀歯) ・樹脂(レジン) ・硬質レジン前装冠(前歯の保険クラウン)など
これらの耐久年数は、おおよそ5〜7年程度。 中には数年で再治療が必要になることも。
これに対し、自由診療で用いるセラミックやジルコニアなどは、10年・15年以上もつものが多く、二次虫歯のリスクも低いとされています。
つまり、保険診療での“繰り返し治療”は、結果的に歯を削り続けることに繋がり、歯の寿命を縮めてしまうのです。
✅ データが示す現実:保険中心の治療で残る歯は?
ある調査によると、
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80歳で20本の歯が残っている方の多くは、定期的なメンテナンスや自由診療を取り入れていたという傾向があります。
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一方、治療中心・保険中心の歯科通院をされていた方の平均残存歯数は、5〜8本程度とも言われています。
「保険でその都度治す」ことが悪いのではありません。 ただ、“保険で一生もつ”と勘違いしたままでは、確実に歯は減っていくのです。
✅ 保険のメンテナンスは素晴らしい仕組み
一方で、保険でカバーされるメンテナンス(定期検診・クリーニング)は非常に優れた制度です。特に予防の意識が高まっている現在、 メンテナンスに定期的に通うことで、歯の喪失を大きく防ぐことができることがわかっています。
実際の統計では、
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メンテナンスを受けている人の80歳時点の残存歯数は平均15〜20本
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受けていない人では5〜8本前後 という大きな差があると報告されています。
つまり、もし保険診療を選ぶのであれば、必ずメンテナンスまで含めて取り組むことが必要不可欠です。 保険を選ぶ=最低限の治療 ではなく、 保険の制度を最大限に活かして、予防につなげていくことが鍵になります。
🏥 当院の考え:選べる医療を正しく知ってほしい
私たちは、保険・自費のどちらか一方を勧めることはしません。 ただ、「違いを理解したうえで選べるようにすること」はとても大切だと考えています。
・保険診療の限界や特徴 ・自由診療で得られる治療精度や長期安定 ・治療後のセルフケアやメンテナンスの重要性
こういった情報をきちんと知っていただいたうえで、 “その人にとって最善の選択”を一緒に考えていきたいのです。
✅ まとめ:保険診療を否定せず、現実を知ることから
保険診療を選び続けた結果、次第に噛めなくなっていく。 そのたびに繰り返される「やりかえ」治療。
——本当に、その繰り返しを一生続けていきたいですか?
歯は、1本失えば戻ってきません。 「安いから」「保険でできるから」と安易に選ぶのではなく、 “長く噛める未来”を守るために、今どんな選択をするべきかを一緒に考えていきましょう。
保険診療は素晴らしい制度です。 ただし、それは「最低限の医療」であって、「長く歯を残すための治療」ではありません。
そして、もし保険診療を選ぶならこそ、定期的なメンテナンスこそが未来の歯を守る最大の鍵になるということを、ぜひ知っていただきたいと思います。
これからの時代、「歯を守るためにどんな治療を選ぶか」を考えることが、将来の健康を左右します。
「これって保険でできますか?」ではなく、 「どんな治療がベストですか?」と聞いていただける関係を、私たちは目指しています。
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